建国と憲法、それぞれの思い チマッティ神父と千葉卓三郎
ピアノソナタ「国の肇(はじめ)を讃えて」の作曲者であるチマッテイ神父と五日市憲法の起草者・千葉卓三郎。2人の共通性に光をあてた講演と演奏の集まりが5月11日、五日市交流センターまほろばホールで開かれた。

G・コンプリ神父
イタリア人のチマッティ神父は、1926(大正15)年サレジオ会の宣教師として門司港に上陸。その際「これから新しい考え、新しい志……。桜の花……、すばらしい自然の宝庫。喜びの涙が出る」との手紙を本国に送り、多くの日本人司祭や修道者を育てる。

岡村繁雄さん
音楽家でもあり、900以上を作曲。戦前、戦後もキリスト教が外国の宗教として厳しく監視されるなか、たびたびコンサートを手がけ音楽を通して普及活動にいそしんだ。1940(昭和15)年に書かれた冒頭の曲は、神武天皇の国造りがテーマ。当時は内地だけでなく満州にも放送されたという。一方、日本人子弟の教育にも力を尽くし、サレジオ学院の礎を築く。
当日は「骨の髄まで日本人になった宣教師と五日市憲法の精神」と題し、ジャーナリストで千葉卓三郎に関する著作を持つ岡村繁雄さんとサレジオ会のガタエノ・コンプリ神父が基本的人権の宣揚を進めたそれぞれの人物像を語った。その後、約15分間におよぶピアノソナタを弾いたのは地元のピアニスト、しょうじみかさん。

しょうじみかさん
イベントを主催した日本いのちの文化協会の池田正昭さんは「生きた時代も場所も異なる2人。直接のつながりはないが、憲法と建国の理念には、それぞれが描く〝国への深い思い〞が底流にあるのかもしれない」と話していた。
撮影=伊藤勝之さん