巧妙な「雌しべ」と「雄しべ」の位置
盛夏を迎えた多摩地域の山間部では、様々なホトトギスの仲間が咲き始めます。
高尾山でよく見られるのはヤマホトトギス、御岳・奥多摩地域ではヤマジノホトトギスがよく目立ち、標高1000㍍付近からタマガワホトトギスが山吹色の花を沢沿いで咲かせます。
野鳥のホトトギスの胸にある模様と花の斑点が似ていることが名の由来となっています。
花の形はユニークで、花びらの付け根から雌しべの花柱が上方に伸びて3つに分かれ、さらに先端で2つに分かれてカニの手のようになり、その下には楕円形の葯を持つ6本の雄しべが突き出ています。
まるで噴水のような形。なぜこのような形をしているのでしょうか?
マルハナバチなどの昆虫が飛来すると、花びらの奥にある蜜を吸うために頭を潜り込ませますが、同時に「雄しべの花粉スタンプ」が背中にペタッと押されます。
また他の花で花粉を身に着けてやってきた昆虫の場合には、その花粉は雌しべに付着して受粉が完了。花の蜜に誘われてやってきた昆虫たちは、無意識に花粉の運搬を担うことになります。
ホトトギスの花は受粉率を高めるために、雌しべや雄しべの位置を巧妙に進化させたと考えられています。