青空 台地 農の風 ~ 農のあるまち 生きる人たち~
「写真は人をつなげてくれる」レンズを向けて50年 写真集5冊発刊

今は小鹿野町の津谷木歌舞伎にレンズを向ける日々
中嶋康夫さん 青梅市 地域の風景、文化・芸能を記録
青梅市東青梅の中嶋康夫さんが「大神のやどる山里」の写真集を刊行してもうすぐ1年になる。今は埼玉県小鹿野町の津谷木歌舞伎にレンズを向ける日々だ。
「大神のやどる山里」は、同市小曽木の岩蔵地区に伝わる2つの行事を住民の表情と里山の風景を織り交ぜ追ったもの。
毎年7月に開催される「フセギのワラジ」は、疫病や悪霊が村の中に入らぬよう40センチほどの大きなワラジを村境に吊るし、生活の場を守る災厄の行事。「おいぬさま行事」は地域に祀られている「おいぬさま」にご飯、塩、酒を供えて1年の無事、平穏を願う神事。暮らしや文化など民俗的な記録面からも喜ばれる写真集になった。
写真を始めたのは高校時代。新宿のデパートで「世界報道写真展」を見て感銘を受けた。東京写真大学(中野区、現東京工芸大学)で写真技術を学び、スポーツ写真の道を選択した。
拝島にあった石川ジムでの撮影で、ミドル級の佐々木英信さんと出会い、ボクシングに情熱を注ぐ姿を追いかけた。1987(昭和57)年に初の写真展「ボクサー英信」を新宿で開催した。雑誌の「ワールドボクシング」から声をかけられカメラマンの仕事に打ち込んだ。
99年には霞川の汚れに胸を痛め、現状を報せたいと新宿で写真展「霞川」を開催し、河川環境の悪化に警鐘を鳴らした。
写真は続けていたが、60代は親の介護に追われた。その後、コロナ禍となった。外出ができず、家で撮りためたネガを整理すると、1975(昭和50)年ごろの青梅の商店街の日常などの風景が出てきた。
妻の喜代子さんや同級生に見せると、「こんな暮らしの細かな所までレンズを向けていたのか」と誰もが懐かしさに駆られた。「残しておきたいね」と喜代子さんの一言で写真集「昭和50年・青梅商店街」を刊行した。伝えたい写真は一冊に収まらずすぐに続編を出した。
現在取り組んでいる津谷木歌舞伎は木魂神社に伝わる奉納歌舞伎だ。祭礼は今年も5月3日に行われた。
中嶋さんにとって写真は「人と人をつなげてくれるもの」だという。それだけにフィルム撮影にこだわる。「暗室で印画紙に焼く。フィルムの写真には艶がある。デジタルではそうはいかない」とうなづいた。