頻尿で困ります、もれそうです 過活動膀胱でしょうか?
東京西徳洲会病院 腎臓病総合医療センター長 泌尿器科部長 小川 由英
通勤中に急に尿意を催したり、バス旅行が頻尿(尿が近い)のために参加出来ないなどで困るとのことで、外来を受診することがあります。最近の新聞の記事に、衛生用品製造大手ユニ・チャームの調査によると、50歳以上男性3人に1人が尿漏れを経験し、その多くが、「尿がズボンにしみて周囲に気づかれるのが不安」と答えたとあり、この尿意切迫(急に起こる、抑えられないような強い尿意で、我慢することが困難な愁訴)で困っている人は少なくない。
また、ある製薬メーカーの〝なるほど病気ガイド〞には、過活動膀胱とは「急に我慢できないような尿意が起こる」「トイレが近い」「急にトイレに行きたくなり、我慢ができず尿が漏れてしまうことがある」などの症状を呈する病気で、40歳以上の男女の8人に1人が、過活動膀胱の症状を経験していることが、最近の調査で分かったとある。
ここで、過活動膀胱とは、尿意切迫感を必須とした症状症候群で、通常は頻尿と夜間頻尿をともないます。切迫性尿失禁(筋肉の緩みなどで、本人の意思とは関係なく、尿が漏れてしまう症状)が必ずあるとは限りません。過活動膀胱と診断するためには、膀胱や前立腺の病気(前立腺肥大や癌、膀胱腫瘍、膀胱結石、尿路感染、神経因性膀胱など)が無い場合と学会などでは定義されています。したがって、殆どこれらの前立腺や膀胱の病気で受診される人が多いので、本当の〝過活動膀胱〞と診断できる症例は殆どありませんし、稀です。
50歳以上の男性で、過活動膀胱症状を呈する場合、殆どが前立腺肥大の始まりが原因です。この症状を悪くする因子(アルコール、刺激物、不規則な性生活)を日常生活で避ければ症状は一時的に良くなります。風邪、過労、抗アレルギー薬や安定剤や睡眠薬なども悪影響を及ぼします。前立腺を大きくする要因としては、肉類中心の食事、不規則な生活で疲れるのでと強壮剤(男性ホルモン様作用があります)服用、遺伝的体質などがあります。
更年期過ぎの女性で、過活動膀胱症状を呈する場合、尿道狭窄か膀胱下垂(瘤)が原因です。やはり悪化させる因子は避けなければなりません。ケーゲル体操(骨盤底筋体操)が膀胱下垂には最も有効です。骨盤底筋を強化すると、3つの効果(尿失禁と臓器脱の改善、腟の筋肉調節と緩み改善、性感の向上)があります。その強化方法としては、所謂骨盤底筋体操も役立ちますが、排尿中に尿流を止める、入浴中に自分で膣の締めと緩める運動、規則的な性生活なども欠かせません。当然のことですが、膀胱も筋肉組織ですので、全身の筋力強化も大事です。
このように過活動膀胱症状を呈して、病院を受診すると、必ずクスリ(過活動膀胱治療薬)が処方され、受診すれば同じ薬を何年でも処方してくれますので、一生飲むことになってしまいます。薬には必ず副作用(喉の渇き、脈が速くなる、尿が出にくくなる)があります。したがって、薬に頼るより、生活習慣を自分で直してみては如何でしょう。
最後に、頻尿(尿中の発癌物質や病原菌を排泄し、無くす)はそれ自体良いことですので、頻回排尿で膀胱の筋力トレーニングをすることと飲水励行を継続して下さい。特に、タバコを吸う人は膀胱癌になり易いですから、1〜2時間で排尿し、膀胱を空にしましょう。膀胱炎になり易い人も、尿を我慢しないようにすれば、再発は少なくなります。
東京西徳洲会病院 腎臓病総合医療センター長 泌尿器科部長 小川 由英
現 職
東京西徳洲会病院 腎臓病総合医療センター センター長
東京西徳洲会病院 泌尿器科部長
琉球大学名誉教授
職 歴
1970年4月 慶應義塾大学医学部助手(大越正秋教授)
1976年7月 米国バージニア医科大学 移植血管外科 臨床フェロー(H.M. Lee教授)
1978年7月 筑波大学 腎泌尿器系 講師(北川龍一教授)
1982年7月 順天堂大学 泌尿器科 助教授(北川龍一教授)、慶應義塾大学 泌尿器科 兼任講師(田崎寛教授)
1994年1月 琉球大学 泌尿器科 助教授(大沢炯教授)
1995年4月 琉球大学 泌尿器科 教授 兼 血液浄化療法部長
2008年4月 琉球大学 医学部 名誉教授、東京西徳洲会病院 常勤顧問
お問い合わせは 東京西徳洲会病院 TEL(代表) 042-500-4433