既に20年来のお付き合いになる。今回はステイホームの中、スマホを使った遠隔での取材を行った。
ラテン音楽の神髄を福生で伝承する音楽家
雫衛二さん
「出身は埼玉県。子供の頃は水泳、野球と体育会系でした。結婚を機に福生にギター教室を開講しました。生徒は小学生から年配者、学校の先生もいる。教えるのは技術もだけど、取り組み方とか考え方とか。〝キューバで体験したことが強烈過ぎて〞、そこで学んだ大切なことを伝え続けていきたいです」。
キューバの音楽体験とは、どういうことだろう。
バンドを始めてキューバ音楽に出会い、フェスティバルに出るために、現地にむかうことになったというが、20年前のキューバはどんな国だったのか。「映画でも有名になった、ブエナビスタソシアルクラブをきっかけに、ソンというラテン音楽にのめり込んで。現地では自炊して地元のミュージシャンと交流したけれど、日本とは音楽への取り組み方が全く違って、それは強烈な体験で。もう〝気持ちからやり直せ〞、と言われているようでした(笑)」
音楽関係者はコロナ禍で不自由な境遇にあると言うが、 「もともと不自由に感じていたので、あまり変わりがなく」と雫さん。「でも短期間で世界中の価値観が変わってしまった」と語る。そう感じるベテランミュージシャンは、これからの世界をどう見ているのだろうか。「お金じゃない価値観がもっと生まれてくると思う。コンサートも数千人というフェスは厳しいし、少人数の音楽家が、少人数の観客の前で演奏するようなスタイルになる。音楽がもっと身近になって、機能する時代になるのでは、と思っている」。
若い人はCDを聞かず、スマホとイヤホンばかり音楽を視聴する。「ステレオやラジカセから、その場の空気を感じながら聴くとか、リアリティが段々と薄まっているのは確か。だけど音楽は目に見えないからこその、想像力という力がある。音楽家も自分が何をしたいか、判っている人が強いと思うんです」。
奥様もミュージシャン、ご子息が取り組んでいる空手の雑誌に「リズム論」まで執筆するなど、マルチ活動中の雫さん。新しい時代に、新しい価値を広めてくれることを心より期待しています。