NPO法人東京こどもホスピス代表理事 佐藤良絵さんに聞く
小児がんや難病の子どもと家族を支えるNPO法人東京こどもホスピス(昭島市)を2020年6月に立ち上げ、代表理事を務める佐藤良絵さん(50)は、ホスピスを利用する子どもと家族のサポートや拠点となる施設建設に向けた取り組みなどに忙しい日々を送る。欧米で広く普及している「こどもホスピス」は医療機関から独立した「第2の家」ともいえる施設。「こどもホスピス」の取り組む事業や今後の展開について聞いた。
(岡村信良)
難病の子どもと家族を支える あきらめから希望に変わる
建設には多額の費用 でも施設は絶対必要
●ホスピスの仕事は。
佐藤 都内在住の小児慢性特定疾病の子どもと家族を対象に、遊びのボランティアや学習支援、子どもと家族の交流会などを行っているほか、専門家や各種機関と連携し、自立支援、電話相談、ピアサポートを展開しています。利用は無料です。一方で、7月におひさま小児訪問看護ステーションをスタートさせ、引き続き子どもたちと家族が滞在できる施設づくりの準備をしています。
●利用者の声は。
佐藤 「生きる力になった」などの声をいただいています。LINEなども活用し、利用者が「1人ではないんだ」という環境を整えていきたいですね。あきらめから希望に変わる声を聞かせてもらい、スタッフの励みにもなっています。
●NPOを立ち上げたきっかけは。
佐藤 2017年7月、当時19歳だった長男を骨肉腫で亡くしました。「『こどもホスピス』の存在を知っていたら、もっと充実した日々を送れたはず」と強い後悔の念が背中を押しました。
●目標の施設づくりについては。
佐藤 医療、福祉のどちらの枠組みからも外れて寄付金に頼るしかない現状があり、多額の建設費を集めるのは簡単なことではありません。運営も多くの皆さんの寄付に頼るのが実状ですが、それでも行政に声を届け、制度を広げてもらう努力をしていきたいと思います。孤独に苦しんでいる人が今も大勢います。施設の建設は絶対に必要なのです。支援の輪の広がりにも希望を抱いています。
●うれしい支援もあったという。
佐藤 建設が実現するまでの間、施設の役割を担うルームがあきる野市の「あきるの杜きずなクリニック」内に開設できました。クリニックの小高哲郎院長が協力を申し出てくれました。小高院長は小児外科が専門で小児がんの診療にも携わってきた医師です。「ドリームルーム」と名づけ、毎週金曜日(5週目は休み)の14時〜15時、社会福祉士や保育士らの専門スタッフが待機して難病の子どもたちを迎えています。利用は原則予約制です。ドリームルームは武蔵村山市の東京小児療育病院(第2、4土曜日)、あきる野市の五日市保育園(第2金曜日)でも運営しています。
●佐藤さんはヘブンエンタテイメント社長の顔も持つ。施設の早期完成は急がれるし、楽しみだ。
佐藤 成人向けホスピスが末期がん患者らの緩和ケアなど終末期医療を行う施設なのに対し、こどもポスピスは、医師や看護師、理学療法士、福祉、保育の専門家らによるチームで子どもの成長を支えながら、家族の看護負担を軽減、リフレッシュしてもらう施設を構想しています。イベント会社経営のノウハウを生かし、エンタテイメント性のある明るい施設にできたらと子どもたちと家族のために希望を広げています。