白丸調整池ダム 放水の汚泥と腐葉土河床に堆積
奥多摩川環境悪化や観光事業に影響
都交通局が管理する白丸調整池ダム(奥多摩町棚沢)から放水された汚泥と腐葉土などが奥多摩川のあちこちの河床部分に堆積し、環境悪化や観光事業への懸念が出ている。想定を超えた汚泥が流れ出したもので、中でも水生生物への影響が心配だ。6月に解禁となるアユ釣りにも被害が出ている。
「水面から見ると河床が浅いと思っても実際はものすごく深いという場所もあるかもしれませんので、入渓される際には十分にお気を付けください」
これは奥多摩漁業協同組合(青梅市御岳)が釣り人らに呼び掛けたメッセージだ。文面からは河床に堆積した汚泥などが尋常の量でないことが伺える。
同ダムの抜水点検は定期的に行われている。都交通局は昨年11月10日に、「ダムの水を一時的に抜き、水位を下げて施設の点検や各種工事を行います」と都ウエブサイトなどで告知した。
点検は同月26日に1回目が、12月13日に2回目が行われた=写真。1回目は多摩川は白濁したが、その後少しずつ透明度を取り戻した。水面近い水を流す1回目と異なり、2回目はダム底に溜まった汚泥を巻き込んで流した。結果はあまりの河川の変貌に誰もが驚く事態となり、同漁協には問い合わせも相次いだ。
都交通局は、環境維持に最善を尽くした抜水方法を考え、作業を行っているが、想定を超えた汚泥の量で、対応に苦慮。今後の教訓になった。
6月15日にアユ釣りが解禁となる多摩川では実害が出ている。同漁協は解禁に向け1500キロのアユの成魚を放流する予定だったが、このうち500キロを来年に延期した。迷惑をこうむるのはアユ釣りを楽しみにしてきた太公望たちだ。
水生生物への影響ははまだ調査が行われておらず、把握できていないが、それなりの影響はありそうだ。
同漁協のある組合員は「河川へ流入した堆積物は完全には取り除くことはできない状況なので、台風で漁場が洗われるのを待つしかない」と話している。