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明日への経済インタビュー 山下真一都商工会連合会長

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明日への経済インタビュー 山下真一都商工会連合会長

日経平均もトピックスも過去最高を記録した。大企業の賃上げ幅も軒並み伸びた。ただ、8月になって日銀の利上げで為替、株式市場は大きく揺れた。果たして景気は良いのか。地域経済、中小・小規模企業の今後などについて福生市商工会長で、東京都商工会連合会長でもある山下真一さんに聞いた。 (聞き手・岡村信良)


 

利上げ、円高、物価上昇 経済環境を注視

経営や資金繰り 商工会に相談を

 日本経済のデフレからの脱却は。地域経済、中小・小規模企業の状況はどうか。

「7月31日の日銀の金融政策決定会合で、追加利上げと国債買い入れ減額計画を同時に決定した。追加利上げも示唆した。ただ、外国為替と株式市場が急激に円高、株安に振れたことで、追加利上げは、年内は無理との観測が出て、市場は一旦落ち着いた。だが、市場の動向は注視する必要がある。止まらぬ物価上昇、求められる賃上げ、実質賃金が低い中、大企業は儲かっても7割の中小・小規模企業は厳しい環境にある。金利の上昇は利払いが増え、借入が多い中小・小規模企業にとっては経営環境は一層悪化するだろう。景気を冷やすことにならないか懸念される」

 景気の現状は良くないということか。

「すごく悪いからは脱出しているが、あまり良くないと見た方がいい。何とか我慢できるているという範囲かも知れない。人件費や原材料価格の上昇分を価格転嫁できるかだが、大手のトップが価格転嫁を認める発言をしても、現場は価格交渉担当者の成績に縛られ、認めないというケースもあるという。下請けという弱い立場で、他社との関係もあり、値上げは言えない」

 多くの業種で人出不足は進んでいる。

「人が集まらなければ倒産もある。人件費分は少しは認めてくれている。それでも感覚的には昔と同じだ。これでは人件費や原材料費の上昇分を吸収するには限界がある」

 格差が広がり、勝ち組、負け組は進むのか。

「大手が儲かり、中小が苦しむ。格差は広がり、勝ち組、負け組は一層鮮明になる」

 中小・小規模企業の悲鳴は、地域経済に影を落とす。

「商工会では経営指導員が会員の相談に対応し、経営や資金繰り、雇用や労働・社会保険などに対し、アドバイスを行っている。専門家等に直接話も聞ける。補助金など都の施策や国の施策を紹介し、たくさんあるメニューの中から使えるものを説明できる。事業者に諦めさせないという姿勢で取り組んでいる。相談し、話をするだけでも気持ちが前向きになれる」

 商工会の果たす役割が比重を増しているようだ。

「原油など原材料価格の高騰や急激な円安に加え、 従来からの事業承継、人手不足、生産性向上などの問題が継続しており不透明感はぬぐえない。他にもデジタルトランスフォーメーション(DX)、持続可能な開発目標(SDGs)、脱炭素社会などの社会的な課題に対して中小・小規模企業の取り組みが急務となっている」

 事業継承は大きな問題だ。

「最重要課題と考えている。引き継ぐ人を商工会も一緒になって探している。空き店舗などを起業家に紹介してもいる。空き店舗に頑張る店が出て、売上げを伸ばしている姿が周辺に連鎖し、新たな店が出店し、にぎわいが戻っている地域もある」

 DXは時代の要請だ。

「積極的にDXを活用して商品・サービスの提供方法の変更、新商品・新サービスの開発、顧客や販売先を変更するなど環境変化に果敢に立ち向かっている。こうした挑戦する取り組みこそが中小・小規模企業と地域産業の持続的発展へとつながると感じる」

 広域的な取り組み、行政や他の団体との連携も大切だ。

「五日市線を含め青梅線沿線を一体として考えるなど広域的な取り組みも進めたい。各商工会の職員は連合会からの出向なので横のつながりがあり、機能的だ。人口減少社会が進む中、行政と力を合わせ流れを変えたい。あのまちで働きたい、店を出したい、と思ってもらえる魅力ある地域を創出していきたい。また、羽村市商工会青年部が主催する激辛フェスのように地元のJAなどと連携した取り組みも大事と思う」

 連合会長として2期目が6月からスタートした。改めて抱負は。

「事業者に寄り添った商工会でありたい。繰り返しになるが、経営指導員による伴走型経営支援をさらに充実させたい。中小・小規模企業の改善・発達を図るためのDXの推進による生産性向上などを強化したい」

 東京都商工会連合会の持ち味は。

「多摩地域21、島しょ6の27商工会の連合体。一緒にやろうという仲間意識の強い団体だ。一方で議論もし合い、みんなで良いものを生み出していく力とシステムがある」

 取り組みに大いに期待したい。ありがとうございました。

「事業者に寄り添った商工会でありたい」と語る山下会長

「事業者に寄り添った商工会でありたい」と語る山下会長

■武陽ガス代表取締役社長、一般社団法人日本ガス協会理事など業界のほか、東京都商工会連合会会長、福生市商工会会長、福生警察懇話会会長、航空自衛隊横田基地協力会会長、福生・横田交流クラブ会長などを務め、西多摩内外で幅広く活躍する。2023年6月東京の雇用就業を考える専門家会議委員、2024年4月東京の中小企業振興を考える有識者会議委員、同年5月産業構造審議会地域経済産業分科会委員に就任。

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