ケンカって避ける方が良い? 心がたくさん動いて築いていく人間関係とは…
昨今、大人たちは幼児期や学童期における喧嘩やトラブルを未然に防ぐよう意識しているように感じるのは私だけでしょうか。そんな風潮に何となく言葉で言い表せられない危機感を覚え、ふと立ち止まり少し奥行きをもって考えてみました。
山登りでの出来事。山頂から下山する際に、普段体の動きが大きいH君(3歳)は、なかなか自分の体を止められず前を歩いているKちゃん(4歳)を誤って押してしまった。ちょうど崖が近くにあり、慎重に下りようとしていたKちゃんは大事には至らなかったものの「H、バカヤロウ」とはっきりと言う。悪気が無かったであろうH君はその言葉にうまく応えられず、「バカじゃないもん」と一言。何度か互いに応戦を交わした後、分の悪いH君は引くに引けない表情で「そんなに言うなら、泣かせてやろうか」と言葉を放つ。
それに対し、周りの友達は〝自分たちはそんな事しないし〞との言葉をH君に投げる。更に引けなくなったH君と、こんなに危険なところで人を押すなんて許せないと言ったKちゃんとの睨み合いを経て、狭い山道で叩き合い、それぞれが自分の言いたいことを一生懸命に主張した。私は前にも後ろにも列が続く一本道で下山を中断してしまう事が気になり、泣き出したKちゃんの手を取り「行こうか」と進みだす。すると、納得のいかない様子のKちゃんは「明日Hのこと殴ってやる」と独り言をぽつりとつぶやく。最後尾のH君は未だに腹を立てていて、何もしゃべらない様子。私は、〝この喧嘩どうなるんだろう…〞そもそも下山している際中の出来事なので、〝みんな疲れたよな〞、〝お腹も減っているよな〞と思いを巡らせ、歩みを進める。休憩予定地の麓に到着すると、皆でお茶を飲みながらホッと一息つく。ここから保育所まであと300㍍。最後の力を振り絞り、皆で帰る。ゴールが近づいた道端で、Kちゃんがヒイラギの葉っぱを節分用にとって帰らなければと、採取する。しかし、とげとげしているヒイラギの葉は、Kちゃんには痛くて持てない様子。するとさっきまで怒っていたH君が、「ぼく持とうか?軍手してるから」と。Kちゃんは少し間を開け「いーの?」とH君に葉を渡す。このとき、H君、Kちゃんはどんな心の動きがあったのだろう…。その後、H君は「ぼくはこのために軍手を持ってきたんだよ」と安心した朗らかな表情で何度も何度も私に伝えてきた。1か月後、同じ山に登った際に、Kちゃんを誤って押してしまった場所で、「ぼく、ここでKのこと押しちゃったよね、ごめんね」とH君。それを聞き、Kちゃんからは「私もたたいちゃってごめんね」と。その会話を聞いて私は鳥肌が立ちました。喧嘩を目の当たりにすると私たち大人はすぐに「ごめんね」と言うように促し、その場で解決めいた結果を出すよう__に働きかけてはいないだろうか。しかし、この二人のやりとりを見た私にとっては、〝子どもたちの心は私たちが思っている以上に深く、簡単ではない。だからこそ、深い人間関係を築いていくためには心が動き、それを整理したり、表現しようと決断する時間が必要なのではないか〞と考えさせられた。
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