「美しい地球を子供たちに残したい」循環型農業で観光、環境、福祉をつなぐ場に
東京地球農園/拠点:あきる野
JR武蔵五日市線沿線には〝東京の富良野〞と呼ばれる秋留台地が広がる。武蔵引田駅から徒歩約5分の、そんな耕作地で、「安心安全野菜を自分たちで作ろう!」と2000年に数家族で始まった市民農園「東京地球農園」はある。
きっかけは1人の早稲田大学生、奥田潤二さんだった。在学時に突然、脳腫瘍が発症し「なぜ自分だけが」と目の前が真っ暗になった。空気、水、食で作られる人間の身体の中で、奥田さんは食の大切さにのめりこみ大学を中退。有機無農薬農法を学び、海外青年協力隊活動を経てあきる野市で野菜栽培を始めた。しかし急遽、北海道富良野に移住をすることとなり、その想いを受け継ぎ地域の市民によって設立されたのが「東京地球農園」だ。
同園代表の阿部嘉明さんと、副代表の久保田武男さんを中心に当初、栗林だらけだった畑を開墾し、耕作地の拡大を続け、現在では約2000坪の農地を耕作している。「美しい地球を子供たちに残したい」。園名にはそんな想いを込めた。
耕作では極力農薬を減らし、微生物の力を生かし、チップたい肥や発酵たい肥を土に埋め込み資源循環農法を行っている。「子どもたちに土から野菜が育つことを体験してもらいたい」と農業体験と収獲体験も行い、年間2000人を越える親子が参加している。また、養蜂も行っており「栗はちみつ」「アカシアはちみつ」が大変人気を呼んでいる。
また、微生物を活かした「EMボカシ」(有用微生物群)」を製造し、地元自治体(あきる野市)が進める生ゴミのたい肥化に協力している。あきる野市は27年前から専用バケツを市民に貸与しており、年間70〜80世帯(令和3年度実績81世帯)が申請し生ごみの堆肥化を行っている。
現在では都心でも西武造園などの協力を得て、同園の資源循環システムが動き出している。「どうしたら美しい地球を子供たちに残せるのか、一緒に考えられる農園にしたい」と阿部さん、久保田さん。「観光、環境、福祉、農業と、あらゆるものが手を結ぶ場になれば」と話していた。