八王子城探訪「横地道」
1590年7月、秀吉は関東で力を持ち抵抗していた北条氏を打ち破り、天下統一を成しとげる。これに先立つ6月23日、後北条3代氏康の3男、北条氏輝の居城、八王子城は1日で落城する。
このとき氏輝は小田原に詰めており、城は城代家老の横地監物らが守っていた。圧倒的な秀吉軍の前に落城は必至。横地ら数人は城を脱出。小田原に戦況を知らせ、再起を図るべく平山氏重の檜原城に逃げた。
檜原城も落城すると檜原北谷の最深部茗荷平から奥多摩の小河内に向かい、力尽き自刃したと伝わる。
郷土史研究家らでつくる「八王子城山会」の小松敏盛さん、椚國男さん、原嘉文さん、高沢寿民さんらは横地の落ち延びた経路を「横地道」と呼び、足を運び、藤倉の山中の「監物血洗の井戸」など横地が残した足跡を追った。奥多摩町では、蛇沢で横地を埋葬した旧武田家臣の田草川新三郎の子孫にも面会し、真実に迫ろうとした。
私は檜原村松姫研究会に所属しているが、檜原の山中を落ち延びていく姿は、武田勝頼の息女、松姫にも通じるものがある。行く先は反対だが、両者とも命を懸けた逃走の手がかりを村の各所に残している。
■猿島渡さん(本名・森下晴男)は檜原松姫研究会に所属。地域の自然や文化、歴史を写真や動画に納めている。地元をテーマに作詞、作曲も手掛ける。代表作に瀬音の湯が舞台の「湯けむりの女」などがある。