雪女と千ヶ瀬の渡し
朝のテレビドラマ「ばけばけ」の主人公の小泉八雲、代表作に『怪談』があります。
1890(明治23)年に来日した著者ハーンは、松江や熊本での教師生活、神戸での記者勤めを経て、東京帝大での英文学講義に向け一家で上京した。1902(明治35)年3月には今の新宿区西大久保に移転し、『怪談』もその時期の作品です。

『怪談』に収録の雪女の舞台が、雪深い北国ではなく、あきる野や八王子方面への「むかし道」にあった、今の青梅市の「千ヶ瀬の渡し」だそうです。
「船頭が家に帰ってしまった渡し場にたどり着いた木こりの親子、その晩の寒さで父親が命を落とした」との言い伝えが、妖怪の物語に描かれたのでした。春のドカ雪を考えると「暖をとる設備のない渡し舟の番屋での老父の悲劇」は、千ヶ瀬だから起こる事件です。英語版の『怪談』前書きには八雲自身が「西多摩郡調布村の農夫からの話し」と記している通り、小泉家には千ヶ瀬から娘さんが一人住み込んで居り、男手が必要な庭や大工仕事に来た父親が語り手であったのです。「むかし道」にあった多摩川の渡し舟、この地に吊り橋が架かるのは1922(大正11)年2月のことでした。
(画・文大倉十彌也)
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