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防災食育センター整備 一石三鳥の施策
昨年4月の福生市長選で勝利し、5期目の1年が過ぎようとしている加藤育男市長にこれまでの加藤市政を振り返り、残りの任期で取り組むべき課題を聞いた。 (岡村信良)
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‐17年の加藤市政で、やり遂げた施策を振り返ると。
加藤 2017年9月に開設した防災食育センターは、平常時には市内の小中学校全10校に学校給食を提供し、災害時には避難所になる。発災後4日目以降の3日間、市内の全ての避難所に1人1日2個のおにぎりと汁物を届けることができる機能を持つ。
‐整備には随分苦労があったと聞く。
加藤 国に対し、施設の整備に対する補助や建設用地の無償使用について、私自身が直接、関係機関へ出向いて調整を重ねた。努力が報われ、様々な補助金などの活用や、関係政令も改正していただき、約1万平方㍍の国有地の無償使用が可能になるなど大変費用対効果の高い施策になった。老朽化した学校給食センターの更新、中学校完全給食の実現、防災施設の新設と一石三鳥を達成した。
‐子育てしやすい街として定着してきているが。
加藤 待機児童対策では2016年度から24年度までの9年連続で、4月入所における待機児童ゼロを達成できた。9年連続は、保育サービスが充実している多摩26市の中で福生市だけだ。「ふっさ子育てまるとくカード事業」は23年度にスマートフォンを活用し、LINEからの電子申請をはじめ専用ウェブサイトを通じて各協賛店からの情報発信ができるようになるなど、利便性が格段に向上した。この事業は私の1期目の09年度に手掛けたもので、現在まで発展する形で継続しており、大変思い入れの深い事業だ。日本経済新聞社と「日経クロスウーマン」が実施した「共働き子育てしやすい街ランキング」ではこうした取り組などが評価され、15年から21年にかけ7年連続でトップ10入りを果たし、24年には3年ぶりに全国3位、都内では1位に返り咲くことができ、大変うれしい。
福生駅周辺整備 軌道に乗せていく
‐5期目で取り組む課題の中で、福生駅周辺整備については。
加藤 JR福生駅は公共交通の結節点であり、様々な地域、世代、文化をつなぐ、にぎわい創出の拠点だ。福生駅西口地区市街地再開発事業や福生駅東口の富士見通り線整備事業については5期目の任期中に、持続可能な形で軌道に乗せていきたいと考えている。このうち西口地区市街地再開発事業は、資材高騰等の影響で工事費等が高騰、労務単価も上昇している。また、事業方式の検討協議の長期化などにより事業の主体である再開発準備組合は事業全体のスケジュールを延伸している状況だ。様々な課題はあるが、事業の重要性に変わりはなく、引き続き再開発準備組合への支援を行っていく。
‐人口減少への対処は。
加藤 人口減少問題は、自治体経営の根幹に関わる大変重要な課題であるため、「人口ビジョン及び総合戦略」を策定するなどして、定住化対策を進めてきた。現在は人口の目標値を達成できる見込みだが、引き続き、対策を講じていく。
‐全国どの自治体も防災対策は必須だ。 加藤 昨年は、元日の能登半島地震、9月の奥能登を襲った豪雨、また、8月に初めて発表された南海トラフ地震臨時情報など防災意識が高まった年だった。冒頭述べたように17年に防災食育センターを開設し、23年度には、10年ぶりに見直された「首都直下地震等による東京の被害想定」等を踏まえ、市の地域防災計画の修正を行うなど防災対策の強化を図っているが、防災対策にゴールはない。国においても26年度に向けて防災庁を設置する動きもあるため、引き続き、防災体制の強化や住宅の耐震化などについて検討していく。
‐広域行政を実のあるものにするためには。
加藤 都心から程よい距離を保ち、豊かな環境や自然との共生、充実した子育て支援、製造業の集積地などの特徴を持つ西多摩地域はアフターコロナの社会においては高く評価される可能性があると感じている。4市3町1村からなる西多摩地域広域行政圏協議会で互いに切磋琢磨して圏域の魅力を高め、広くその魅力を発信していくことが大切だ。
‐公共施設の相互利用も課題だ。
加藤 公共施設の老朽化や公共部門における人材不足の問題は、自治体における喫緊の課題となっている持続可能な行財政運営を行うためには、公共施設の共同利用や事務の共同処理などの面で、近い将来、自治体間で連携を進めていく必要があると考えている。
‐市長が思い描く福生市の未来像は。
加藤 本市の人口の内、外国籍の方が占める割合は約8%と、都内26市では最も高く、国籍別でも、約70カ国の方が居住され、国際色豊かなまちだ。本市の小中学校では英語教育に力を入れており、小学校第5学年全児童、中学校第2学年全生徒が、公費で立川市にあるTGG(東京グローバルゲートウェイ)に参加するなど、「使える英語」の習得に向けて取り組んでいる。全ての福生の子どもたちが自分の夢を実現するため、世界にも羽ばたけるようなまちになってほしいと思っている。
‐それだけに苦労もあると思うが。
加藤 人種のるつぼともいえる中での市政運営は難しい部分もあるが、我が国では今後人口減少社会が続き、外国人との共生は必要不可欠となる。福生市は、将来の日本の縮図のようなまちだと思う。皆でアイデアを出し合い、色々なことにチャレンジすることで、まちも人もインターナショナルで、おもちゃ箱をひっくり返したような魅力溢れるまちとして発展していってほしいと願っている。
‐返礼品付ふるさと納税をスタートすると聞く。返礼品として福生・横田交流クラブの特別会員権や横田基地日米友好祭への招待券などは魅力的と思うが。
加藤 市の魅力の向上につながる返礼品については担当職員一丸となって知恵をしぼっていきたい。 (2月7日、福生市役所で)