安全保障の環境は一変
全国議長会基地協会長に就任1 年
福生市議長 清水義朋氏
新たな安全保障戦略で基地は 国は丁寧に説明を
会長の責務を果たす清水氏
福生市議長の清水義朋氏が全国市議会議長会基地協議会会長になって2月で1年を迎える。就任前と就任後では世界と日本の安全保障の環境は一変した。ヨーロッパと東アジアを中心に地政学リスクは極限的に高まった。政府は12月16日、政府与党政策懇談会から敵のミサイル発射基地などをたたく「反撃能力」の保有を明記した「国家安全保障戦略」など安全保障関連3文書の報告を受け、これを閣議決定した。防衛費は今後5年間で計43兆円とし、歴史的な増額となった。
基地を抱えるまちの議長として、また基地協会長として清水氏はこの1年、ロシアのウクライナ侵攻の行方、台湾海峡の緊張、エスカレートする北朝鮮のミサイル実験などを注視。事態を重く受け止め、変化する状況と向き合ってきた。
「安全保障や外交は国の専権事項だが、基地協では、安全保障の環境が厳しさを増し、不安定さが高まる国際情勢の中、基地協の理事会や役員会で日本の防衛について自然に話が出るようになった。基地協会長として全国の8つの部会の総会に出席する中でも安全保障の環境が厳しさを増していることへの緊張感はこれまでと違うものを感じた」と清水氏。
「10月4日に北朝鮮の弾道ミサイルが発射され、Jアラートが機能したが、基地協の中でも『いったいどこに避難すればいいのか』という声があった。避難施設がまったく足りておらず、基地協としても今後考えていく必要がある」とも。
基地協は、基地をはじめとする防衛施設を抱える自治体の議会が所属し、現在211市町村が加盟。基地が存在することを前提に活動している。基地交付金・調整交付金の充実、防音など周辺環境対策、地元雇用など地域経済対策などを政府予算に反映するよう要望するほか、国会議員との情報交換を行い、基地対策関係施策の充実を求めていくことなどを目的に活動する。それは地元に基地がある負の面を政策でカバーし、地域住民の理解と協力を得ることで、基地と駐屯する部隊が本来の機能を十分発揮できる環境を整えることに繋がる。
3文書は、外交・防衛の基本方針である「国家安全保障戦略」、防衛の目標と手段を示す「国家防衛戦略」、防衛費の総額や装備品の整備規模を定めた「防衛力整備計画」で、このうち「国家安全保障戦略」と「国家防衛戦略」には、敵のミサイル発射基地などをたたく「反撃能力」を保有することが明記され、安全保障政策の大きな転換となった。
要望活動で先頭に立つ清水氏
清水氏は「基地協が、基地が存在することを前提に活動している以上、今回の新たな戦略により各基地での装備や部隊がどうなるかを国から各自治体に可能な限り丁寧に説明してもらう必要がある」と指摘している。
これまで自衛隊になかった長距離射程のミサイルを地上、戦闘機、潜水艦から発射できるようにすることで、敵国のミサイル基地などを破壊する反撃能力は、これまでと比べ格段に高い抑止力になるだろう。また、進展し続ける科学技術により、防衛能力は、宇宙領域、サイバー領域、電磁波領域でも早急な対応が迫られている。
安全保障の環境が激変した20 22 年だが、23 年も引き続き、国内では安全保障の拡充、国外では世界的な地政学リスクの沈静化に最大の努力が払われることになり、先行きは極めて不透明だ。
福生市は、行政面積の3分の1を横田基地に提供しており、戦後77年、米軍との長い歴史の共有がある。1973年から進められたKPCP(関東平野空軍施設整理統合計画)で、立川基地、調布飛行場、キャンプ朝霞、ジョンソン基地、府中空軍施設などの大部分が日本に返還されるとともに横田基地に整理統合され、2010年当時の中期防衛力整備計画の中で航空自衛隊横田基地が新設され、府中にあった航空総隊司令部が横田基地内に移転された。清水氏は「加藤育男市長が言うように基地は無いことが望ましいものの、国の防衛に関する問題でもあり当面動かしがたい施設。市の面積が狭くなる、東西交通の阻害になるなどデメリットはあるが、国際交流の場となったり、市内児童、生徒の英語教育推進に活用可能などのメリットも多くある。メリットを享受するには平和であることが大前提。外交で平和を構築していく努力を各国が怠ってはならないことは言うまでもない」と話した。