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農業

江戸東京野菜ブランド化 JAパンも
東京の農地を守り、未来へつなぐ

農地は野菜などの収穫以外に環境保全や防災といった公益的な機能を持つ。
代々農家に受け継がれ、守られてきた東京の農地。
東京の農業の今を知り、未来へとつないでいくためにすべきことを7月に就任した野﨑啓太郎JA東京中央会長に聞いた。
(東京25ジャーナル・岡村信良)

野﨑啓太郎JA東京中央会長に聞く

西多摩には青梅の今寺や藤橋、あきる野の小川に美しい水田があり、田植えや稲刈りが体験できる。東京の農地、作物についての思いは

野﨑 都内には14のJAがあるが、米を生産しているのは、あきがわ、西東京、八王子、町田、マインズ、西多摩の7JAになる。宮中新嘗祭に東京は米と粟の献穀を担当しているが、米は7JAのうち西多摩を除く6JAで順番で出している。郷愁を誘う田んぼを残すためには実のある取り組みが必要だ。八王子の高月にある田んぼで生産される米は、港区にある新進の酒蔵で東京の米と水で作る日本酒に活用され、米が足りない状態だという。あきる野の小川の米も福生市の石川酒造で「八重菊」の銘柄で定着してきている。流通を考え、拡大していくことが田んぼを守ることになる。

1992年に新たな生産緑地制度ができてから2022年で満了を迎えた。新たに特定生産緑地制度という10年更新の制度ができた。農地を残すための取り組みについて。

野﨑 農地は野菜などの収穫以外に、環境保全や防災といった公益的な機能を持つ。例えば大規模な災害があった時に、畑が周辺の避難所になるということもある。行政は防災用と農業兼用の井戸を掘る場合に助成をしている。特定生産緑地制度については、JA東京中央会は東京都、各区市の農業委員会とも連携して、制度を生産緑地所有者へ周知し、農地を守る取り組みに力を入れた。その結果、目標よりも多く94%の農地が特定生産緑地制度に指定された。

農地を活用した農業体験も盛んだ。都内でも農業公園がずいぶん増えてきた。

野﨑 農業に親しんでもらおうということで各JAはアグリキッズスクールや親子農業体験に取り組んでいる。また、農業理解という点で遊休農地を市民農園として貸し出し、定年退職者や主婦たちが農業の担い手に加わってくれれば裾野が広がる。地産地消の中で、飲食店にも地元の産物を使う輪が広がれば理想的だ。

農業後継者については。

野﨑 農業の高齢化、人手不足は社会問題だが、東京は意外と後継者がいる。民間会社に勤めてからUターンで戻って、親の後を継ぐというケースが多い。小平、三鷹、小金井には農地もあり、若い世代によるハウストマトの研究会がある。溶液栽培で美味しいトマトを作り、直売し地域の人たちに喜ばれている。

東京の農業のいちばんの強みは、消費者がすぐそばにいることだ。

野﨑 農家は、消費者がすぐそばにいるこ東京の米と水で作る日とから地域住民との関係性を大切に、農業をしていると思う。地元の消費者が農家の味方になってくれて、そういう人を増やしていくことが大事になる。農地のないところから農地があり直売のあるところに越してきた人が1番感じるのは野菜の味が違うということだそうだ。

農地の存続 相続税が課題農政連を通じて改正を要望

直売所の充実は大事だ。

野﨑 直売所は農家が集まり、作物を売り、所得が得られる大切な場所。消費者にとっては新鮮で安心で安価な作物が求められる場所だ。地域の農業振興、緑の環境を守るまちづくりなどの視点から行政とも連携して魅力を高めていきたい。利用を高めるキーワードが、加工品の充実と道の駅的な多角的な運営だ。直売所ではないが、埼玉県日高市にある敷地内に加工工場を持ってハム・ソーセージを直売し、更にパークゴルフ場や温泉施設までを備えたリゾート施設「サイボクハム」は手本になる。

東京農業のPRの工夫は。

野﨑 JA東京中央会として江戸東京野菜のブランド化に力を入れている。全部で52種類が確認されているが、亀戸ダイコン、金町コカブ、奥多摩ワサビ、のらぼう菜など10種類ほどが生産され、流通に力を入れている。助成金が出るので生産する農家も増えている。中央会が音頭を取り、東京野菜の会もできている。このほか、中央会では米粉パンに力を入れている。その名も「JAパン」。今は新潟の米を使っているが、東京の米も使用して消費を増やせればいい。

農業の振興には政策が大事だ。

野﨑 JAには全国摩の7JAになる。宮農業者農政運動組織連盟という政治組織がある。農地の存続については相続税が大きな要因になっている。農業倉庫や農業用施設の土地は生産緑地に指定されない。制度の見直しをしないと農地は減る。農政連を通じて法律改正の要望を出している。JAを取り巻く経済環境は厳しくなっており、各JAの経営支援も大事になってくる。政治とのパイプを大事に東京の農業をしっかり守っていきたい。力を高めていきたい。

東京都信用農業協同組合を経て、1989年、JA西東京(当時はかすみ)に入組。
総務課長などを経て、2003年度から常務理事、08年度から代表理事組合長。
23年7月Ja東京中央会会長に就任

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