「陶人一重孔希 いのちの炎」出版

檜原村の岡部保博さん、由紀子さん夫妻
一重ゆかりの喜多方で出版記念報告会
檜原村の岡部保博さん、由紀子さん夫妻が伝記『陶人一重孔希 いのちの炎ほむら』(歴史春秋社)を出版した。40年にわたり親交を重ねた孤高の陶芸家の生涯と作品について、保博さんが5年間かけて執筆。由紀子さんの写真をふんだんに収め、一重の世界を網羅した本が完成した。
福島県喜多方市を拠点に、類いまれな表現力で独自の陶芸世界を切り拓いた陶芸家・一いちじゅうこうき重孔希。コロナ禍の2020年に闘病生活を送り、翌年3月、享年73で世を去った。
余命宣告を受けたとき、夫妻ら親しい人が「孔希会」を立ち上げ、一重が自ら作品を厳選して喜多方市で開催した「いのちの炎」が遺作展になった。
つややかで見る者を惹きつける「白磁や青磁の器」の数々。そしてそれとは対照的に、修行の厳しさを思わせる鬼気迫る表情と黒々とした力強さで圧倒する「羅漢像」。現代社会の煩悩を飲み込むかのようなその土の叫びは、まさに一重が全身全霊で燃やし尽くした「いのちの炎」そのものだった。
その才能は会津の地にとどまらず、檜原村の薬師堂に108体の陶仏を奉納するなど、西多摩とも深い縁を結んでいる。
孤高を貫いたがゆえに、その偉業に対し正当な評価が追いついていない。そう思う一重を敬愛する有志や友人たちは多く、業績を色あせることなく伝えようと伝記の出版が企画された。
岡部夫妻の一重との思い出や、一重のさまざまな逸話とともに、作陶の原点がていねいにひも解かれている。貴重な撮り下ろし写真が一重をより身近に感じさせてくれる。
6月6日には喜多方市の大和川ミュージアム四方昭和蔵で出版記念報告会が開かれ、夫妻が本に込めた思いが披露された=写真下。
6月26日からは新宿区の柿傳ギャラリーで「一重孔希の祈りの造形展」が開催される。会期は7月1日まで。29日には夫妻による講演会と懇親会が開かれる。
元中高教員だった保博さん、国立民族学博物館の展示資料収集に携わりヨーロッパアルプス地方を探訪した由紀子さんの知識と経験、さらに多彩な人脈により伝記はより奥深いものになった。

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