2012・新しい年を語る
就農に明るい兆しも JAにしたま 遊佐和生組合長JAは地域コミュニティーの核に
福生、羽村、瑞穂の3市町のJAにしたま管内で、農業に従事する人の大半が地元の直売所に出荷している現状を踏まえれば、直売所を充実し下支えしていくことが地域農業の振興に必要不可欠と考える。
「管内の4つの直売所は、組合員の意向で地元の産物だけで運営している。仕入れはしていません。有機栽培やエコファーマーの資格を取っている人も少なくない。地場で生産する安心、安全、新鮮でおいしい産物を一層アピールし、地元の人に愛される直売所を確立していきたい」と語る。
管内には東京狭山茶、シクラメンという特産品がある。いずれも自家直売のほか、通販も行うなど販路が確立されている。その意味で「高設栽培で収穫したイチゴなど直売所の顔になるような新たな特産品や加工品の誕生に努力が必要」と認識する。
全国的なテーマとして農業の跡継ぎ問題がある。JAにしたま管内も例外ではないが、20、30代で実家の農業を継ぐ人、40、50代で会社勤めを辞めて就農する人、定年退職後に農業を始める人などが見受けられ、明るい兆しも出ているという。また、農業改良普及センターが行う農業教室の受講者が増加していることも最近の傾向だという。
一方、親子農業体験の開催やサツマイモ掘り取り付定期積金の発売などで一般市民の農業理解を深める活動も可能な限り継続していきたいという。また、農協職員が農業への理解を深めるための取り組みも行っている。 「今年度から職員に1週間程度、地域の農家で農業体験をしてもらっている。昔に比べ農業が身近なものではなくなっている。職員に農業を改めて知ってもらうことは大切」と語る。
日本の農業は今、2つの大きな問題に直面している。TPP問題と福島第1原発事故による放射性物質の問題だ。「TPPに参加すれば日本農業の地盤沈下は免れない。米作などが少ない西多摩では影響は比較的少ないと考えられるが、安い輸入野菜が入ってくる以上、影響はある」と警戒する。「放射性物質については都内のJAで測定機器を備え、独自の検査を実施しようとの動きがある。安心、安全なくして地域農業は存在しない」と指摘する。
地域金融機関として地元に密着するJ Aは、地域コミュニティーの核として存在感が増している。「地域を回る渉外担当者には、お客さまにこれまで以上に情報を提供し、情報を収集することの大切さを訴えている。6月には元狭山支店の新店舗が完成するが、耐震性能を一段と強化した。万一のときには地域のみなさんを守る砦になる」という。