あきる野市引田の真照寺、本堂北東の階段上に薬師堂がある。あきる野市で最も古い建物か、最も古い建物の一つ。寺は平安初期(寛平3年、891年)の創建とされるが、薬師堂の歴史はさらに古く、奈良時代(神亀元年)に行基が自ら薬師如来像を刻み草庵を結んだとされる。寺は元は、秋川を隔てた六枚屏風岩上の日照山(にってらやま)にあり、南北朝時代(延文元年、1356年)に足利基氏が再建。戦国時代(享禄4年)に戦火に晒され消失するも、薬師堂は難を免れ、現在の場所に移されたと伝わる。都指定有形文化財。
『新編武蔵風土記稿』には、寛平3年(891年)造立の柱を用いて延文元年に再建したと見え、すでに江戸中期頃には柱に虫穴などがあって古色を呈していた、と記されている。昭和44年の解体修理で、屋根はもとの萱葺(かやぶき)
から銅板葺に変わった。
行基作とも伝わるこの薬師如来像は、引田薬師と呼ばれ古くから信仰を集めてきた。毎年10月11日と21日が縁日で開帳される。高さ数十センチの小柄な立像である。
新着記事