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前立腺がんトモセラピー治療体験記

 〝東京西徳洲会病院(渡部和巨院長、昭島市)に米アキュレイ(カリフォルニア州)製の高性能放射線治療装置「トモセラピー・ラディザクト」が多摩地区で初めて導入され、4月1日運用開始した〞。この記事を本紙5月27日号で掲載した。記者は導入当日から前立腺がんの治療を受けた。 (東京25ジャーナル・岡村信良)

記者が前立腺がんと診断されたのが昨年4月。2月にかかりつけ医が問診から前立腺の異常を気にかけ、念のためPSA値を検査した。結果はがんが疑われる値である4を大きく超える17だった。生検組織診断でがんが確定。前立腺の左右両方に及ぶT2c だった。ただ、がんの悪性度はそれほど高くないと言われ、当時地域新聞の編集長をしていた記者は仕事を休むことができず、経過観察で様子を見ることにした。

仕事は取材、紙面レイアウト、広告営業をこなさなければならず、以前に比べ著しく疲れを感じるようになり、部下から「編集長の仕事をしていない」と指摘されたことをきっかけに、いつでも治療が開始できるよう退職。フリー契約になった。

10月、手術ロボットやIMRT(強度変調放射線治療)がある東京西徳洲会病院に転院。概ね3カ月に1度のPSA検査を受けたが、数値が24に上昇したことをきっかけに治療を決断した。手術による全摘か、放射線治療かを迷ったが、臆病な記者は手術を避けた。

加藤雅宏放射線科部長から「4月1日から治療を開始します」と告げられ、「いよいよか」と腹をくくった。事前にCT、MRI検査などで正確にがんの位置を特定。放射中に体の動きを防ぐ、オーダーメードの固定器具が造られた。

「トモセラピー・ラディザクト」はIMRT(強度変調放射線治療)に対応可能なトモセラピーの最新機種。IMRTとは正常組織へ当たる放射線量を極力少なくし、がんの形や大きさ、場所に合わせて、がん病巣をピンポイントで照射する低侵襲の治療法だ。 CT画像から線量分布を確認する機能があり、位置照合と合わせ正確で最適に照射して治療する。さらにベッドを支える機構を備えて患者の体のずれを1㍉㍍以内に抑え、精度を一層高めている。

治療は通院で行われ、土日を除き週5日。5月24日まで計38日間に及んだ。前立腺がんの位置を可能な限り一定にするため、治療前にトイレに行って小水と腸内のガスを出し、担当医の問診を受け、放射線室に入室。装置のベッドに横になると放射線科のスタッフが体の位置を合わせ固定器具で止めてくれる。治療は7分程度。固定されたという重苦しさ以外は何も感じない。

ただ、副作用を最大限軽減した装置でも、体にそれなりの負担はある。照射10日目を過ぎた頃、膨満感を感じ食事が進まなくなった。便に白い粘膜状のものも混じった。 担当医に告げると、CTで確認することになった。記者は直腸炎を心配したが、懸念する異常はなかった。それでも膀胱に軽い炎症が見られることから、より正確な照射を目指して、照射前に膀胱注入とガス抜きをすることになった。 膀胱注入は、小水を出した後にカテーテルを通し100CCの生理食塩水を膀胱に注入して照射中の膀胱内の水分量を一定にするもの。ガス抜きは肛門から管を入れ、強制的にガスを体外に出すものだ。小水やガスによって微妙に動く前立腺の位置をミリ単位で一定に保つ措置だ。 カテーテルを挿入する際はゼリー状の麻酔薬が塗ってあるが、その後の痛みを考慮し、期間中は鎮痛薬を飲み続けた。体への負担はそれなりにあったが、措置を行う看護師や医師への申し訳なさがそれを上回った。 後半の18日間はこの新たな照射となったが、膨満感は軽微になった。問診で毎回聞かれる「夜中は何回トイレに行きましたか」は最後まで「ゼロ回です」が続いた。 膨満感がなくなり、お腹が本調子になるには治療終了を待たなければならなかったが、これでがん治療が終わったかと思うと、長かった38日間も短く思えた。 7月12日、治療後、初めての診察を受けた。PSA値は7程度。

担当医からは「数値を気にする必要はありません」とのこと。次回は10月18日が診察日だ。

正直、パンツに沁みができるぐらいの軽い尿漏れが稀にある。それも小便をした後に気を付ければ、なくせることで日常生活に支障は全くない。これでがんが寛解したなら、記者にとっては夢の治療。トモセラピーの治療を多くの人に語りたくなる。それでもがんは個人によって千差万別。担当医としっかり話し合って治療法を決めることが大切なことは言うまでもない。

 

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