青梅の板金加工会社が「たき火台」開発
2021年度グッドデザイン賞を受賞
「構造が機能を兼ねている」と評価
創業50年以上の板金加工の会社「小沢製作所」(青梅市今井3)が開発した組み立て式たき火スタンド「MOSS FIRE(モスファイア)」が10月20日、2021年度グッドデザイン賞を受賞した。
グッドデザイン賞は1957(昭和32)年、旧通商産業省によって設立された「グッドデザイン商品選定制度」(通称=Gマーク制度)を継承する、日本で唯一の総合的なデザイン評価・推奨の運動。単にものの美しさを競うのではなく、産業の発展とくらしの質を高めるデザインを、身の回りのさまざまな分野から見いだし、広く伝えることを目的としている。今年のテーマは「交動」だった。
同商品は同じ形のプレートが5枚で1セットとなり、4枚で組み立てるとコンパクトで高さのあるタイプ、5枚で組み立てると開口部が広く地面に近いタイプになり、。シーンに合わせて2通りの使い方が選べる。熱によるプレートの変形を抑えるための通気孔の規則的な形状で、軽量化と強度のバランス、たき火の熱を脚部に伝わりにくくするためのトラス構造とし、細かな機能設計から導き出した。プレートの上面部分にはU字カットを複数設けており、スキュアー(串)などを活用することでさまざまな用途に使え、スタンドに立て掛けて串刺しのものを炙(あぶ)り焼きにしたり、横にブリッジに組んでケトルやメスティンを火にかけたりすることもできる。
同賞の審査員からは「人数・用途・シーンに合わせて2通りの形状で組み変えて使うことができるフレキシビリティーを持ったたき火台。1㍉の薄いステンレス板は肉抜きや曲げ加工を加えることで、軽量ながら反りにくく丈夫な板になっている。穴の空いた板の組み合わせによるシンプルな構造は、全てステンレスのモノマテリアルでできており、見た目も美しいうえ、空気の流れを生むなど燃焼性を高める効果もある。構造が機能を兼ねている」と評価する。
オリジナルのソフトケース付きで、価格は23000円〜。公式オンラインストアで販売している。
公式オンラインショップ
青梅のシネマネコがグッドデザイン賞
「商業のための建築・環境」分野で
青梅に今年オープンした映画館「シネマネコ」(青梅市西分町)が10月20日、グッドデザイン賞を受賞した。
かつて織物産業で栄え映画館が3館あった青梅の商店街では、長年映画看板をまちおこし事業としてきたが、映画館のないまま50年が経過。「映画にまつわる街の灯を絶やしたくない」と感じた若手経営者、チャス(東青梅3)社長の菊池康弘さんが映画館の復活に動き始めた。
同館は登録有形文化財に指定された築85年以上の洋風木造建築を改修し生まれた。映画看板事業などを手がけてきた商店街と、菊池さんが検討を重ね事業化。建築物内部に隠れていた小屋組や木摺等の痕跡を丁寧に再構成し、歴史を紡ぐ織物の街のシンボルとしての地域文脈を表現するリノベーションとした。
建物は昭和初期建造のもので外観は基本的に当時のままだったが、室内は石こうボードで壁、天井が覆われ建物の個性は失われていた。事前調査や改修記録から、小屋組は木造トラス構造によって大スパンを可能にしていることが分かり、無柱空間を必要とする映画館に生かし、小屋組を現す空間を目指した。壁の内部には「木ずり」と呼ばれる、現在ではほとんど使われることのないしっくいの下地材が比較的良い状態で眠っていることが明らかとなり、丁寧に釘や腐食部分を全て取り除いて内装材として再活用し、「ここにしかない地域の文脈の表現」を目指したという。
今回のグッドデザイン賞では「商業のための建築・環境」のカテゴリーで、こうした事業が評価され受賞に至った。菊地さんは「これからもたくさんの人に愛される場所を目指し頑張っていきたい」と話す。