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「人によるフィールドへの負荷を最小限に、自然に触れ合う機会を作る」

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青梅市と世界的環境倫理プログラム「LNT」が連携協定

自治体として全国初の取り組みへ

締結式には岡村代表、寺田副代表の他、柴田さんと釜の淵でリバークリーン活動を「あすくり青梅」事務局の伊東由宥子さんらが出席

青梅市と、世界的なアウトドアを楽しむための環境倫理プログラムを提唱するNPO法人「Leave NoTrace(LNT)JAPAN」(墨田区)は6月15日、同庁舎内で地域連携協定を締結。自治体との協定締結は日本初となる。同NPOは重点エリア「スポットライト」として、釜の淵公園を指定し今後、ゴミや直火問題について、LNTのプログラムに沿った内容の看板設置や広報など、青梅市と連携し取り組んでいく。

青梅では事業者や市民などにより積極的な清掃活動が行われている

同市ではBBQ客や観光客による河川や、林道のゴミ放棄をなくすため、各地で市民や事業者らによるリバークリーン活動が盛んに行われてきた。御岳渓谷でラフティング事業を行っている、みたけレースラフティングクラブの柴田大吾さんはボランティアを募り、1年を通じて毎週月曜日に多摩川のリバークリーンを実施。地域内外のより多くの人に川ゴミの問題について考えてもらうため、リバークリーンマラソンやリバークリーンラフティングツアーなども精力的に企画し、ゴミを拾い続ける日々の中、根本的な解決方法を模索してきた。

「川や自然を好きになる機会を作ること。それがゴミ問題の根本的な解決につながると考えていた」と柴田さん。自然に触れ合う際のルールや基準を探す中、学識経験者や有識者によるエビデンスに基づいた世界的基準「LNT」と出会った。「人が自然界に足を踏み入れれば、負荷が生まれるのは必然。自然と人間の距離を離すのではなく、どうしたらその負荷を最小限にできるかを考えるプログラムに可能性を感じた」。柴田さんは同団体の常任理事として活動を始めた。

アメリカ発祥の「LNT」は、全ての野外活動でのテクニックが7つの原則を基にして、活動時に環境に与えるインパクトを最小限にするための環境倫理プログラム。世界94カ国のアウトドアレクリエーションでの行動基準となっており、富士山周辺で行った認知度調査では、日本は5%にとどまったが、台湾・タイ・フィリピン・ネパールでは100%、中国・インドネシア・カンボジアなどでは50%と、アジア圏でも急速に広がりを見せている。日本では2021年、同NPO法人が設立され現在、北海道から沖縄まで各種団体が参加。観光や自然環境に携わる事業者450人余りが、同プログラムのトレーニングを受けている。

秋川渓谷でも取り組みが広がっている

7つの原則は「事前の計画と準備」「影響の少ない場所での活動」「ゴミの適切な処理」「見たものはそのままに」「最小限のたき火の影響」「野生動物の尊重」「他のビジターへの配慮」を基にしており、誰でもわかりやすく、楽しく実践することができる。柴田さんはこれまでLNTが学ぶトレーナーコースを2度開き、そこで学んだ事業者らが、秋川渓谷などでも精力的に活動を続け、西多摩全域に広がり始めている。

柴田さんが開いた御岳渓谷でのLNTプログラム

同市でも、河川などでのゴミ問題を深刻にとらえ、根本的解決を模索する中、LNTや柴田さんたちの活動に注目。「観光事業者だけでなく、地域として取り組めれば」と、今回の連携協定を決めた。締結日、浜中啓一青梅市市長を、同法人代表の岡村泰斗さん、柴田さんらが訪問。浜中市長は「青梅の自然を存分に楽しんでもらうため、来訪者のマナー啓蒙、子どもたちの教育の機会につながれば」と期待を寄せた。岡村さんは「青梅市は市街地と大自然を持つ地域。アウトドアレクリエーションの正しい考え方を、青梅を皮切りに、全国へ広げていきたい」と意気込みを見せた。

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