●正福寺地蔵堂(8月8日、東村山市野口町)
都内唯一の国宝木造建築である。良く知られた鎌倉の円覚寺舎利殿(神奈川県唯一の国宝建築)と瓜二つの建物。共に室町時代禅宗様の代表的建造物である。反り上がった屋根、その下の裳階(もこし)、その間の扇垂木(おおぎだるき)、弓欄間(ゆみらんま)、花頭窓や桟唐戸(さんからと)などを特徴とする美しいお堂。毎年8月8日、9月24日、11月3日に開帳される。堂内は土間であり、参拝は底の平らな履物で。
●丹叟院阿弥陀堂(8月8日、奥多摩町小丹波)
JR青梅線古里駅の北方山すそにある丹叟院(たんそういん)。寺の本堂の東に弁柄(べんがら)が塗り込まれた阿弥陀堂がある。奥多摩町で最古の建物とされる。かつて近くにあった無量山西光寺から移されたもの。西光寺は、この地の旧家である原嶋氏の先祖が開基。堂内には木造阿弥陀三尊立像と、その両脇に17体ずつ、合計34体の観音像が納められている。お堂と仏像は、室町末期~戦国時代のものと考えられている。観音像群は秩父三十四観音霊場のものに対応するもの、と考えられている。お堂は奥多摩町開拓の歴史を今に伝えるもの。毎年8月8日に開帳される。
●安楽寺明王堂(8月14日、青梅市成木)
成木一丁目自治館前バス停から北方の丘に向けて進むと、正面に真言宗安楽寺の仁王門が見えてくる。本堂は仁王門の前を左に曲がり、丘に登る道の先にあり、通常の伽藍と大きく異なる。仁王門をくぐった先には軍荼利明王堂がある。このお堂には「成木の軍荼利さま」として親しまれている軍荼利(ぐんだり)明王立像が納められていて、毎年8月14日に開帳される。地元の方は勿論、その威厳ある姿に魅せられて、遠方からも仏像ファンが訪れる。
奈良時代、行基がこの地へ来て、鳴動するクスノキの大木のもとで軍荼利明王の姿を感得し、その”鳴る木”を用いて像を刻み祀ったのが本寺及び地名「成木」の由来ともいわれる。
軍荼利明王像は鎌倉時代前期以前、仁王門の仁王像は平安時代後期の作とみられ、こちらもなかなか味がある。明王堂は江戸時代初期に再建されたもの。
安楽寺は埼玉県との県境にあり、境内の丘を越えると飯能市である。飯能市に入って徒歩10分程のところに古刹長光寺がある。惣門、三門、中雀門、本堂が一直線上に並ぶ典型的な曹洞宗伽藍が見もの。特に三門が特徴的。安楽寺と合わせて寄られては如何か。