父の背中-40- 先代の知恵と教え
創業の原点は、顧客貢献
オオワダ 大和田正樹氏
1992年の会社設立以来、オオワダは顧客にとって最良のパートナーをめざしてきた。この経営姿勢の背景には、大和田龍之助会長の創業にまつわる周囲への感謝の思いがある。長男で現社長の正樹氏がこう話す。
「父は昭和27年、練馬区生まれ。大手時計メーカーに勤務。精密機器製造の現場で腕を磨き、やがて埼玉県飯能市でパソコンの製造、修理、流通加工の分野で独立する。その際、発注元の人たちが親身になって支えたという」
市場も味方した。90年代はノート型パソコンが一気に普及。そうした中、時流を読むことに長けている龍之助氏はハードディスクの生産にシフト。1996年羽村市に本社・工場を移転し、時代と顧客の思いに応えられる環境を作り上げた。
「父が会社を興したとき、私はまだ高校生だったが、人脈の広さには驚いたことを憶えている。顧客の依頼に『ノー』といわない。納期と品質には一切妥協しない。顧客の思いに応える事が第一。それが現在でもオオワダの強みになっており、得意先の満足につながったと思う」
一方、正樹氏は75年生まれ。幼少期から野球に打ち込み、大学では芸術工学を学ぶ。その間、野球はずっと続け、就職した大手家電メーカーの流通を担う企業でもグラウンドで汗を流した。
「流通を企画、管理する業務は楽しく、職場でも、野球で培ったチームプレーの精神で仕事ができた。だが、役付き近くになったころ、父から自社に来るよう打診された。迷った末、入社10年の区切りになる2008年に専務取締役で入社した」
50代半ばになった父親は、早く後継者になってほしかったに違いない。得意先に同行し社長業の手本を見せ、17年に交代した。いま、オオワダは防犯カメラの設定とメンテナンス、自動車や航空機などのシートの縫製といった時代と顧客ニーズに沿った経営の多角化を展開している。