子育て支援は1 丁目1 番地
中嶋あきる野市長に聞く
9月のあきる野市長選で当選した中嶋博幸市長に立候補への経過や新市長としての抱負を聞いた。
市長候補は志清会で徹底的に話し合って決め、市長選の圧勝に驕ることなく、議会との関係を重視するとした。ただ、よいと思う政策はスピード感を持って進め、1期目の4年間で公約の道筋を付けていくことに強い意欲を示した。柱となる子育て世代への支援は中嶋市政の1丁目1番地とし、「若者や新しい住民が活躍できるまちづくり」は、地域に活力を与え、未来にのびしろがある取り組みだとした。
一方、村木前市長が推進した介護老人福祉施設は白紙にした。財政再建では企業誘致にしっかり取り組んでいく姿勢を示した。インタビューは大要次の通り。なお、1問1答はニュースサイト東京25ジャーナル12月10日号(25journal.net)で配信=11月16日、あきる野市役所で。
(聞き手・岡村信良)
企業誘致に全力 民間主導でメリハリも
候補に決まった経過は、最大会派で、村木前市長と対峙してきた志清会には対立候補を速やかに擁立する使命がある反面、候補選びで会を割ってはならないと、全員で徹底的に話し合い1本化できたと説明した。
議会との関係については、市長選で1万8600票で勝利させてもらい、解散市議選で、自公で3分の2の議席を取らせてもらったのは現実の結果だが、謙虚におごることなく市政を進めたいとした。ただ、政策を推進しやすい構図となっているのは確かとし、市や市民にとってよいと思う政策はスピード感を持って推進したい。1期目の4年間で公約の全ては実現できないが、道筋を付けたい、と決意を示した。
選挙公約の柱にした所得制限なしの高校生までの医療費無償化など子育て世代への支援は、中嶋市政の1丁目1番地とし、首都圏に立地するあきる野市は、都心からの移住希望者が目を向けやすい環境にあるという地の利を生かし、子育て支援を拡充し、あきる野市のよい所を伸ばし、市の魅力をこれまで以上に発信していく中で実効性のあるものにしていくとの方向性を示した。
村木前市長と市議会との対立の発端となった新たな介護老人福祉施設の建設は、市議会の特別委員会で全会一致で白紙になったとした。一方、高齢者向けの通所施設や在宅支援施設、リハビリ施設の充実などが求められているとし、公約だった市の西部地域への小規模多機能施設の設置はすでに着手していると明かした。
市の財政再建では、企業誘致は大事だとの考えを示し、民間主導で開発すべきところは可能な限り進めるべき、未利用の公有地などは真っ先に行っていくべきで、雇用の場を創出し、税収を高めていきたい。雇用が創出されれば、流動人口にも好影響をもたらし、流動人口が増えれば公共交通にもいい影響が連鎖する。率先して企業誘致に頑張りたい、と決意を語った。
また、市の起債の多くを占める下水道整備は、多くの山間地域、調整区域を抱える自治体にとっては非常に非効率で、整備にもその後の維持管理にも経費がかかるとの思いを吐露し、未整備地区が残るあきる野市を含め西多摩は膨大な維持管理費用を含め、費用対効果を考えていかなくてはならないとの考えを示した。
父の背中 -33- 先代の仕事と教え
地域社会の足になりたい
あきる野市を拠点に西多摩を主な営業エリアにしている横川観光。現社長の山口和彦氏が2014年、前身の横川交通の事業を継承する形で設立。過疎化と高齢化が進むなか、10台のタクシーでスタートした。
「父は50歳を目前に経営者の道へ進んだ。拝島高校を卒業後、昭島市内のタクシー会社やホテルに勤務。その後、あきる野市の『瀬音の湯』のマネジメントを任されている。こうした経歴を見ると、横川観光設立をゴールに修業を積んできたような気がする」
長男で同社常務取締役の山口拳人氏はこう話す。確かに交通と観光が、和彦氏のキャリアの骨格をなしている。しかも、11〜19年には檜原村議会議員を2期務めており、ここでの人脈も会社設立に役立ったかもしれない。
「掲げた理念は〝地域の皆様の足になる〞というもの。そこには父の、人のためになり、社会に役立ちたいとの発想があったはず。2年ほど前、当社よりも規模の大きい秋川交通の経営を引き受けたのも人々の移動手段を守るという決断だったのだろう」
1993年生まれの拳人氏は、帝京科学大学で学び、理学療法士の国家資格を持つ。卒業後は都立神経病院(現都立多摩総合医療センター)で活躍していたが、今年5月、父の仕事を補佐するために横川観光に入社した。医療現場での体験を生かしながら家業と向き合う日々だ。
「多様な利用者のニーズに応えるのが当社の責任。その意味で、父が車イスで乗れるユニバーサルデザインのUDカーを導入したのは慧眼だったと思う。観光向けには9人乗りジャンボタクシーなども喜ばれている」
さらに新たな業務として、ゴルフ場の送迎やスクールバスの運行に対応するほか、あきる野市の公用車運用も受託。だが、コロナ禍は業界を直撃、外出や観光でのタクシー利用が落ち込んだ。これからは父子で力を合わせ業績の挽回に動く。【岡村繁雄】