新規就農者は子育て世代の主婦
5月下旬にミニトマト初出荷 佐藤睦美さん あきる野市
将来は食育や加工販売も
「生活に直結する、管理栄養士の資格を生かせる、子育てしやすい」。今年4月から生まれ育ったあきる野市で就農した佐藤睦美さん(39)が農業の道を選んだ理由だ。
2歳になった長女を保育園に預け、働き始めたのが6年前。子育てと仕事の両立の難しさを感じた。時間の融通が利く仕事はないかと、思いを巡らした。自宅のある同市山田周辺には畑が広がる。生活につながる農業なら子育てとの両立ができ、食にかかわる仕事を続けられると思った。
「農業をしたい」と相談した市役所から東京農業会議の存在を知り、紹介されたのが東京農業アカデミー。2期生として八王子研修農場に2年間通い、栽培のほか、トラクターや耕運機などの取り扱いやメンテナンス、農業ハウスの組み立てなどをみっちり学んだ。
スタートは借り受けた1・4㌃の栽培ハウス4棟と30㌃の畑。「プチぷよ」というミニトマトを中心に、トウモロコシ、タマネギ、ゴボウを育てる。初出荷は5月下旬を見込み、地元の五日市ファーマーズセンターあいな?で販売する。
ただ、作物の様子を見て正しい判断できているのかなど、取り組み始めて分かった難しさもある。頭をひねるようなときは、JA営農相談室、農業改良普及センター、東京農業アカデミー、そして周囲の農家の人たちに助けてもらっている。
それでも小学2年生になった長女を学校に送り出し、学童保育から迎えるまでの午前午後、3時間ほどの農作業は、夫の直寛さん(48)の協力もあり、楽しいと感じている。
育てる野菜はそのまま食べられるものやレンジで調理しやすいものを増やしたいという。「調理に手間がかからないことは主婦にとって大切。トマトの種類を増やし、大きなタマネギにも挑戦したい」と話す。
「農業は家族の協力さえあれば、子育て中の女性の働く場所として最適。農業仲間を増やしたいし、子どもたちの食育にもつなげたい。管理栄養士なので加工販売もやってみたい」。佐藤さんの希望は広がるばかりだ。
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就農希望者の相談窓口となる都農林水産振興財団と東京都農業会議によると、就農の相談件数はここ数年、増加傾向にあり、2016年度は89件だったが、21年度は398件に達した。背景について業界関係者は、農地の貸し借りを進める新制度や、女性を含め農業を求める若者や子育て世代の人たちのニーズの高まりを指摘する。