隠れた素晴らしい東京の財産
今年、コロナ禍もありガイド業は極力控え、来年に向けて御岳山や高尾山を中心に多摩の山々を歩くことにしました。
3月上旬の高尾山、まずヤマルリソウが春の訪れを知らせます。沢沿いではハナネコノメやヨゴレネコノメが咲き、12日後には標高が高尾山よりも高い御岳山でハナネコノメが開花。タマゴケの胞子嚢がニョキニョキと伸びてきました。沢沿いではミソサザイがさえずり始め、御岳山にも春が。
4月に入ると高尾山ではタカオスミレ、マルバスミレ、ヒナスミレとスミレ類が続々と開花し、御岳山ではカタクリが満開に。4月下旬には夏鳥のツツドリが「ポポポッ、ポポポッ」と電子音のようにさえずり、御岳山のロックガーデンではニホンカモシカが縄張り争いを目前で繰り広げていました。
ゴールデンウィーク前後、早朝からオオルリ、キビタキ、センダイムシクイなどの夏鳥のオスが「結婚してくれ!!」とメスに必死のアピール、登山道にはオトシブミのお母さんがせっせと作って落としたゆりかご(揺籃)があちこちに。
6月の高尾山では樹上にセッコク、足元にはムヨウランと希少なラン類が静かに咲き、7月に入るとユリの女王であるヤマユリが山内に高貴な香りを漂わせ、沢沿いの岩肌を見上げるとイワタバコの紫色が目に入る。8月の御岳山では多くの人を魅了するレンゲショウマが満開になり、高尾山の薬王院では子供のムササビがこっそり巣穴から顔を覗かせていました。都心から電車で70〜90分という距離に、これだけ豊かな自然が広がっていることこそ東京の財産です。
同時に感じたことが一つ。10月下旬の御岳山ロックガーデンの沢ではヤマメが繁殖期を迎え、オスとメスがペアになり産卵床を掘る行動が至る所で見られます。秋に入り、御岳山には多くの人が訪れていましたが、このヤマメの繁殖行動に気づく人はほとんどいません。私がガイド業を続けている意味はこの光景にあり、今後も隠れた東京の自然の財産を多くの人に伝えたいと強く思っています。