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人生、花ありてこそ ~プレミアム・カレッジでの2年間~

華道師範 海原春美さん 青梅市友田町

青梅市友田町在住、長淵市民センターなどで華道師範としてフラワーアレンジメントも教える海か いはらはるみ原春美さん(69)は2度、バットで殴られた気分で都度「ヘルプ!」と叫んだ。

最初は東芝やカシオの技術者だった夫の60歳定年後。「自家用車の月のガソリン代が10万円を超えた。かつての勤務地、座間・横浜・多摩・羽村などを走り回っていた。長女が車の鍵を取り上げると、今度は徒歩で徘徊。病院で『若年性認知症』と診断されてからさらなる苦難が続きました」

海原さんはフラワーアレンジメントの仕事を縮小し夫の病院に足繁く通った。夫は12年間闘病、2年半前に不帰の人となる。

「花と植物の癒し効果」で成果発表会に臨む海原さん

夫の死後間もなくして東京都立大学プレミアム・カレッジ(PC)の学生募集広告「南大沢キャンパスではじめる、50歳からの新たな学び」が目に飛び込んできた。文科省は「人生100年時代における教育、雇用、退職後という第3ステージの人生モデルからマルチステージのモデルに変わる」とリカレント教育の必要性を訴える。

これに都が呼応し、PCは小池知事肝いりでスタートしたという。海原さんは「子育ても終わり、夫も送ったので入学したいと子どもたちに相談したら応援すると言ってくれた」と語る。1次小論文、2次面接で3倍の競争率を突破した。

 一昨年4月に2期生44人が本科に入学。コロナ禍によるオンラインの講義を嫌がり9人が辞退。「私はオンラインなら交通費が浮くからラッキーと思った。Zoomは未経験ながらIT企業に勤める息子の手を借り何とか使えるようになる」

毎週レポート提出を求める授業もある。海原さんはパソコンのトラブルで再度「ヘルプミー」と叫ぶ。2度目のガツン。自分で解決できない時は学内の情報センターに訊いた。

後期からフィールドワークが開始。該当する「都政課題」「多摩・島しょ地域の自然」「多摩ニュータウン物語」を全てエントリー。ここで初めてゼミ同期と顔を合わせ会食を重ね、学生気分を味わう。

2年目の専攻科には34人が進む。講義が対面とオンラインのハイブリッド型になると、海原さんは迷わず対面を選択。講義の前後の10分間に学生と積極的に話をした。

図書館に通い1年かけて「花と植物の癒し効果」のテーマで1万5000字の修了論文を書き上げ、パワーポイントによる成果発表会に臨む。「花や植物と人間との関係性や心理効果などを先行研究から探り、自分なりに考察した。フラワーアレンジメントでは気分が落ち着き、園芸では植物の生長変化が認知症高齢者に有効と認められた。花の効果大」

カレッジの2年間で「学びを通して市民センターの教室に通ってくれる生徒さんたちに花の奥深さや専門的な知識を伝えることができるようになった」と微笑む。花のある人生はこれからも続く。

(土屋雄二郎)

父の背中 ■18■ 先代の仕事と教え

使命感とイノベーション

人が住み、働くための空間や環境づくりが建設産業の役割だ。あきる野市に本社を置く五光建設。創業者である中原誠一郎氏が1968年に設立した。以来半世紀、その社会的使命を果たしてきたと長女で現社長の中原聡美さんは話す。

五光建設 中原聡美さん

「昭和16年(1941)生まれの父は、中学校卒業後、鉄骨職人の道に進んだ。腕を磨いて独立しようと考えていたのだろう。やがて鉄工所をはじめたものの、いつまでも下請けではうだつが上がらない。建設会社を立ち上げ元請けなることをめざした」

文字どおり、徒手空拳でスタートした青年の立志伝といっていい。70年代には2度にわたるオイルショックを経験するものの、当初から秋川市(現あきる野市)や東京都の公共事業にも意欲的に参使命感とイノベーション加。数年すると新設中学校の校舎建築工事などを受注していく。

「いまもそうだが、行動力が父の身上。思い立ったことを一気呵成に進め、やり切るタイプ。半面、慎重さも兼ね備え、バブル経済の際、多くの経営者が土地や株の投資に走るなか、それに惑わされず手堅い経営を貫いた」

聡美さんは大学を卒業後、2年ほど他社に勤務。五光建設に戻ると、2006〜18年まで同社が福島県伊達市で運営していた東日本健康ランドカッパ王国で支配人の大役を務めた。父親の助言も受けながら、組織運営や人材育成を学べたと振り返る。

「父がいつも口にしていたのが〝イノベーション〞つまり革新。それが業容の拡大という意欲的な戦略につながり、マンションの分譲を行うデベロッパーにも進出した。現在の主力事業は不動産の賃貸・管理で、収入の半分を生み出す」

社長の交代は19年7月。幸い、事業領域と社内体制は、誠一郎氏が盤石にしてくれている。これは父が娘に託した経営資産にほかならない。聡美さんはいま、会社を全社員の力を合わせて守り抜きたいという。

【岡村繁雄】

コラム執筆者

編集室システムU

西多摩地域を中心とした東京25区管内の政治、行政、経済社会、トピックスなどを配信する「東京25ジャーナル」の編集室。
“地域の今”を切り取ります。

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