奥多摩を故郷にした少年は、大人になり世界を目指す。
奥多摩のトイレがピカピカなことで話題となり、テレビをはじめ取材が立て続けにある。今回は3時間のロングインタビューから貴重なお話を抜粋した。
世界へ「ピカピカ」を発信する3人 OPT(オピト)さん
◆「奥多摩には転入して来られたとか。」
「都内から奥多摩に移住したのが小学生の時。はじめは馴染めずにいじめられたこともありましたが、仲良くなる前提で喧嘩しようって言ったら、みんな受け入れてくれました。そんな僕でも先日小学校で授業を頼まれました」。トイレ清掃員に子供たちが笑顔で寄ってきてくれることが喜びでもあり、驚きでもあるという。
◆「テレビ・ラジオ・雑誌の取材が増えていますね。」
「奥多摩を訪れた観光客の皆さんが、『トイレがピカピカだ』とSNSで発信したことから取材につながっていきました。そもそもは家族に、トイレ掃除という仕事を認めてもらいたいから、このスタイル(ユニフォームやSNSでの発信)を始めました。やるなら徹底的に、しかも楽しんで仕事しようとしか考えていなかった」。
◆「今年は大きな賞に選ばれました。」
「SDG'Sアワード西多摩で賞をいただいたことで意識も変わりました。自分たちが清掃するだけでなく、使う人全員が意識を持つことがSDG'Sにつながる。2030年につなぐには、後継者も必要ですけれど、ひとりが目の前のゴミをひとつ拾うような小さな取り組みが大切だと思っています。」
◆「OPTさんからは『研究』という言葉が何度も出てきますが」
「仕事は単純ですけど、天気とか気温とか、人の多さなどでも変わるので『研究』は欠かせません。清掃という行為を通して、人の心を豊かにしていきたいですし、仕事を楽しむことと『研究』を同時進行でするのは、実は僕の楽しみなんです。」
◆「今後のビジョンを聞かせてください。」
「トイレ掃除を世界に広めたい。貧困と衛生は必ず繋がっているんです。ピカピカのトイレに言語の壁はありません。笑っちゃうくらい綺麗にすれば世界が平和になると心底信じてます。多摩川の源流から奥多摩や各地の名産品をリレー形式で持ち寄り、羽田の多摩川流域で鍋を囲みたい。もちろんゴミを拾いながらの多摩川名産駅伝ですね。その映像に流れるのは流域すべてをドキュメンタリーにした『歌』です。僕の中では既にビジョンが固まっているんです。」
▴(左)次世代へつなぐ「想い」の機会を作る / (右)長靴からシャツまでをこだわりぬいたスタイル
執筆協力:市民ライターKさん