今にも羽ばたく野鳥を彫る手から生まれるいのちに感動
私がバードカービングを知ったのは10年以上前、水上清一さんに会った時。
「それまで見てきたものが普通の模型だった」と感じるほど、水上さんの野鳥たちは生きていた。
水上さんは、前職(と言っても40数年前)に、バードカービングに出会ったそう。
始めは趣味だったというが、今では20を越える教室で講師として数千名の生徒を送り出している。また関連団体の要職でもあり、日本では数少ないプロフェッショナルのバードカービング作家だ。
作品は文部科学大臣賞をはじめ、多くの受賞歴があり、博物館展示もされているものも。
経歴を見ると、技術にこだわる職人肌の方かと思うが、水上さんはいつも優しさに溢れた穏やかな方である。
「まず鳥のことを知らなくてはならない」とのこだわりから、ほとんど見えない腹の下、尾羽の裏側までも丁寧に仕上げられ、生態までも再現している。
檜原小学校では、水上さんのバードカービングの授業がある。私も指導を受けて削ったことがあるが、角のある木材が、カッターとやすりで丸みが生まれると共に、鳥のシルエットが見えてきた時の嬉しさは、大人も子供も「うわぁ!」と喜ばずにはいられない。自分の手から命が生まれるような感覚が味わえる。
とても感激したエピソードがある。鳥の体重までも本物と同じにすることで、目の不自由な方が「野鳥を触る」自然観察会を設けたこともあるそうだ。
いうなれば触るバードウォーッチング?水上さんの温かさと優しさから生まれる沢山の「野鳥」は、いつまでも間近に見ていることが出来るのに、今にも羽ばたく躍動感と驚きを多くの人に与え続けている。