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コラム

善意が引き起こす環境破壊

子供の頃によく魚採りをしていた日野市のとある農業用水路では、ある異変が起きています。

1980年代頃には、あまり見かけなかったカワニナが、ここ数年で爆発的に増えているのです。昔ながらの手掘りの用水路で、水質に大きな変化はなく、現在でも同じ環境が保たれていることから、カワニナの急激な増加は人為的なことが関与していると思われます。

頭に浮かんだのは、数年前にボランティアで行われていたホタルの増殖活動。カワニナは全国の河川や用水路、湖沼に生息し、川底や石に付着した藻類などを食べる淡水性の巻貝です。ゲンジボタルやヘイケボタルの幼虫のエサとしてよく知られています。

ホタルは綺麗な水の象徴として扱われ、水辺環境の復元のために自然保護団体や市民ボランティアによるホタルの放流活動が各地で行われてきました。放流ではホタルの幼虫のエサとなるカワニナが一緒に放されることがあります。

実はこの放流行為が大きな問題を生み出しています。放流されるホタルやカワニナは、元々その地域に生息していた個体ではなく、業者から購入した他地域産の個体が放されることがほとんどで、これが問題の原因となっているのです。

ホタルやカワニナは同じ種類でも地域特有の習性や形態を持っています。ゲンジボタルは東日本と西日本では発光パターンが異なり、東日本では4秒おきに、西日本では2秒おきに発光します。カワニナについては殻の形状が地域により様々であることが明らかになっています。

業者から購入した他地域産のホタルやカワニナが放流された場合、交雑により長い時間をかけて形成されてきた地域特有の習性や形態が失われていきます。

自然環境を復元するための活動は一見「大変よいことを行っている」と思われますが、保全に関する知識が欠如した活動を行なった場合には、逆に自然環境を破壊することもあり、「善意が引き起こす環境破壊」と呼ばれています。

コラム執筆者

宮田 浩

エコツーリズム・グリーンツーリズムなどに携わり現在は年間を通じ、御岳や奥多摩などを中心としたツアーガイドなど数多く行う、川と森を案内するスペシャリスト。

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