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明日への経済インタビュー 多摩信用金庫 金井雅彦理事長

コラム

持続的にたましんと地域がともに発展、成長

『地域の課題解決インフラ』として存在感示す

「お客さまの幸せづくり」を経営理念に掲げる多摩信用金庫(本店・立川市)。地域企業の支え手としての役割を通じて地域経済の活性化に取り組む。昨年6月に就任した金井雅彦理事長に、地域経済の現状やたましんの今後の取組みを聞いた。   (聞き手・岡村信良)


株式、為替相場の激しい変動、物価高など経済環境が目まぐるしく変化している。多摩地域の経済、企業の経営状況を聞かせてください。

「多摩地域には約12万の事業所があり、中小・小規模事業者が数多く事業を営んでいます。たましんが毎四半期、地域で事業を営む約1100先の企業へ実施しているアンケートでは、2024年6月四半期の業況DIは新型コロナウイルス感染症法上の位置付けが5類に移行した2023年6月四半期の景況感を上回る結果となっています」

多摩地域の景況感は上向いているのですね。

「ただ、物価や人件費上昇によるコスト増加に価格転嫁が追いついていないと感じている経営者は少なくありません。これらの要因等もあり、たましんが2024年3月四半期に実施したアンケートによると、2024年中に賃金引上げを実施するかについては、実施予定を含め『引上げを実施する』と回答した企業は、全体で45・8%に留まりました。そのうち「0%以上2%未満の引上げ」との回答が半数を占めていることから、賃金引上げの伸び率は低い状況がうかがえます」

たましんとして、どのように支援していくのですか。

「収益の確保のためには価格転嫁の取り組みが重要となるので、取引先と十分な交渉ができる経営環境を創出するほか、DX化を支援し、原価管理や経営状況の見える化に取り組み、収益性の改善が進むよう促していきたいと考えます。全国の金融機関と協力してビジネスマッチングなどができるサービス「TAMA Big  Advance 」を導入しているので、新たな取引先の開拓や人材確保に向けた支援を引き続き行っていきます」

多摩地域の金融機関としてのたましんの役割を聞かせてください。

「メガバンクや地銀は株式会社であるため、効率性や利益を重視する傾向にありますが、たましんは協同組織金融機関であり、地域経済を支え、盛り上げていくのが役割です。そのため、たましんでは、事業規模にかかわらず、中小・小規模事業者に対して広く支援を行っています。多摩地域に79店舗、2出張所を構え、約3万4000先もの企業・事業所融資先があります。融資の際は金額にかかわらず必要な人に対する融資を大切にしていきたいと思います。預金の口座数は給与振り込みや給食費の引き落としなどに利用していただき100万口座を超えます。融資先も口座数も信金では全国トップレベルにあり、その責任を果たしていきます」

地域に根を張るたましんですね。

「自然豊かなベッドタウンである多摩地域には420万の人が暮らし、様々な業種の企業・事業所が集積しているのが多摩の魅力です。多摩地域の企業・事業所、個人のお客さまと地域社会を支援することがたましんの役割です。企業・事業所、個人、地域社会の課題を解決していくことで地域がよくなり、持続的にたましんと地域がともに発展、成長を遂げていくことに繋がると思います」

中期経営計画2026で目指すものは。

「2024 年度は、3カ年計画である『中期経営計画2026』の初年度となり、メインテーマを『未来に向けて“ つながり” を育み永続的な価値を創造する』としました。経営理念の『お客さまの幸せづくり』の実現に向けて、マーケティング戦略・人財戦略・ICT/DX戦略・拠点戦略の4つの成長戦略を設定しています。コロナ禍では対面での接触機会が減少し、人とのつながりが希薄化した一方で、デジタル空間でのつながりは急速に拡大しました。このような環境変化を踏まえ、対面でのつながりをより一層強化していくとともに、これまでつながりが持てていないお客さまに対して、デジタル技術も駆使してつながりを持つことが重要だと考えています」

多摩ブルー・グリーン賞の開催、「多摩けいざい」の発行など地域シンクタンクとしての役割も果たしていますが。

「多摩ブルー・グリーン賞は、地域企業の優れた技術や経営手腕を評価し、表彰するものです。技術開発や経営戦略創造の活力を生み出し、地域経済がより活性化することを願い実施しています。これまで21回開催し、受賞企業は延べ250社を超えました。受賞企業を中心とした会員組織である多摩ブルー・グリーン倶楽部では会員相互の連携を深める機会が多くなり、地域への貢献活動も活発に行われています」

「RISURU文庫」目録を臼井伸介昭島市長に手渡す金井理事長(右)=昨年

「RISURU文庫」目録を臼井伸介昭島市長に手渡す金井理事長(右)=昨年

「多摩けいざい」はよく読ませていただいています。

「たましん地域経済研究所が四半期に一度発行している冊子です。多摩地域の経済の動きがわかる特集記事や中小企業の四半期ごとの景気動向、各種統計データなどを掲載しています。地域のシンクタンクとして提供した情報を中小企業の経営や自治体の施策等に活かしていただければ嬉しいですね」

企業メセナとして、たましんの積み上げた実績は大きなものがあります。

「多摩地域には特徴的な歴史があり、それらの学術・文化を継承する事業にも力を入れてきました。昭和49年にたましん展示室を開設、昭和51年に多摩文化資料室に改正し、現在は公益財団法人たましん地域文化財団として、季刊郷土誌「多摩のあゆみ」を発行するほか、収集した美術品を展示する美術館を複数運営するなど地域文化の継承や普及に努めています。美術館ではさまざまな企画展を行い、毎回多くの方が訪れています」

日々の暮らしに関する情報提供も行っていますね。

「子育て中の職員が中心となって立ち上げ、制作・編集を行っている『たまちっぷす』は、家族を育むヒントが詰まったWEBマガジンです。サイト配信にとどまらず、子ども向けの『たまテスト』や一般から川柳を公募した『多摩地域あるある川柳』など参加型のイベントも開催しています。昨年は、金融教育の一策として地域の小学校194校にお金のことが学べる書籍20冊で構成する「RISURU文庫」を寄贈し、設置いただきました」

最後に改めて地域の皆さんへメッセージを。

「たましんが地域から必要とされる存在であり続けるためには、やはり地域での存在価値を高めることが重要と考えています。信用金庫だからこそできる地域性を大切にした、店舗職員による地域の方々への訪問を中心としたリアルな環境での活動を通じて、金融はもちろんのこと、非金融においても様々なサービスを提供していきます。こうした活動を通じて、『地域の課題解決インフラ』としての確固たる存在感を示していきたいですね」

ありがとうございました。

コラム執筆者

編集室システムU

西多摩地域を中心とした東京25区管内の政治、行政、経済社会、トピックスなどを配信する「東京25ジャーナル」の編集室。
“地域の今”を切り取ります。

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